2010年6月17日木曜日

アットリーニ、キトン、トム・フォードの間を揺れる

今回もまたスーツの話です。すいません。

昨日、何の気なしにN…のお店をのぞいたら、
サイズ44のアットリーニのスーツがあったので、
ちょっと着てみました。

今までのアットリーニの常識を覆す細さで、
ウエストはそんなにきつく絞ってないものの、
全体にすらっとしたイメージ。
色は明るい目の紺で、近くで見ると細かいストライプが入ってますが、
2メートルも離れると無地に見えるレベル。

あ~これ欲しい。

しかし、セール価格でも結構な値段なので、熟考の価値あり。

というわけで、とりあえずキトン@梅田ヒルトンを見てきました。

キトンは非常に有名なメーカーで、
一部の男性ファッション雑誌の中では神格化が過ぎているきらいもあったりなかったり。

ここの、ニューKBモデルというのを着せてもらいました。
サイズ46でおおむねピッタリ。
印象としては、なんかね、ホノボノとした良さがありますね。
陽だまりでホッコリ、みたいな。
スーツ価格で50万円代から…という、ものすごく値の張るブランドですが、
着た感じは少しも威張った感じのない、
初めて着たのに、まるで昔から着込んでいたかのようにフィットする、
不思議な感じの服です。

で、トム・フォード。
サイズ44のバッキンガムと、サイズ44のコルト(着丈が短い)のリージェンシーの
両方を着せてもらいました。

キトンは胸の丸みを覆い切れなくて、下襟と体の間に隙間が空いてしまうのですが、
トム・フォードは胸板の厚みをある程度想定して作っているようで、
全然隙間が空きません。
そしてウエストの激しい絞り。
背中の、首から腰にかけての複雑なカーブ。
肉体の三次元的曲線的うねりを服が忠実になぞっていて、
これがトム・フォードの色気と呼ばれるものの実体のようです。

なるほどね。

やっぱりアットリーニはやめて、
トム・フォードでバッキンガムをオーダーすることにしました。

トム・フォードの店員の話では、9月にイタリア人技術者が来日してオーダー会を行うそうです。
それに備えて、当面は買い物を控えることにします。
9月までガマンガマン。

ところでですね、
以前、スーツをオーダーした話を書きましたが、
なぜ、その店でオーダーせずに、
トム・フォードのような、いかにもブランド料を大量に上乗せしてそうな、
どうみても割高な店にオーダーするのかと言いますとですね、

これはMen's Exという雑誌の別冊「本格スーツ大研究」によるところが大です。

このムックにスーツのディテールの解説がありまして、
その一つに「バナナ」というのがあります。
「バナナ」の説明をこのムックから紹介すると、
「殺し襟の作業を簡略化するために襟首につけ接ぎ合わせることで襟を丸く形作るためのパーツのこと」
ということです。

…まあ現物を見ないと何のことか分からないと思うので、
細かく説明はしませんが、
(バナナありとバナナなしの両方を見れば一目瞭然です)

要するに、
バナナが付いているのは、
技術レベルがその程度である
と言えるかもしれません。
(違うかもしれません)
(やろうとしたらできるけど意味が無いからやらないだけかもしれません)

で、バナナが付いてないのは
(つまり、殺し襟が出来ているのは)、
私の手持ちのスーツでは、アットリーニとトム・フォードだけでした。
他のスーツには全てバナナが付いてました。
もちろん、以前オーダーしたスーツにもです。
(バタク・ハウスカットもバナナ付きでした。12万もしたのにバナナ付きだなんて…。結局一度も着ないまま捨てました)

そういうわけで、少なくとも今までオーダーした店を再訪する気にはなれません。
バナナが付いているかどうかで着心地が変わるかどうかは分かりませんが、
アイロンワークができない(=コテの技量に不足がある)テーラーってどうなの?
って、
つい思っちゃうんですよね。
(3ピースのスーツ1着で22万も取る店なのにです)

トム・フォードのスーツはエルメネジルド・ゼニアの工場で作っているそうですが、
ゼニアのスーツは何回試着してもオッサン臭いとしか思えないので、
どうにも受け入れられません。
ゼニアの客は腹ボテおっさんばっかりなんでしょうか?
あれはもうちょっとなんとかならんもんかなあ…。

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