2018年1月14日日曜日

二十年ぶりの旅行(下)

前記事から間が開いてしまいましたが、二十年ぶりの旅行(上)の続きです。長いですよ。

事前にふとした拍子に調べて分かったのですが、阿蘇山って寒いんですね。
てっきり九州はどこも暖かいもんだと思ってましたが、宿で地元のテレビの天気予報を見てると、同じ熊本県なのに熊本市よりも阿蘇市の方が5℃くらい低い。
夏なら涼しくて避暑にいいんでしょうけど、冬は寒いから誰も来ないんでしょうね。

というわけで、宿泊先のエルパティオ牧場はオフシーズン、そして平日を選んで来たのでほぼ完全な貸し切り状態。
誰もいない広い風呂場で、夕日を眺めながら入る風呂はなかなかいいもんです。
ご飯はいちいち美味しいしね。何故か分かりませんが、熊本空港に降り立ってからずっと、何を食べても美味しいような気がします。食べ物が美味しいから?それとも空気が良いから?両方?

そして見渡す限りの草原!遠くに高くそびえる山!
どっちを見てもこの二つだけ!

こんなシンプルな風景がめちゃくちゃ気持ちいい!
うんと遠くに風力発電用の風車が回ってましたが、あまりに遠過ぎて何かの飾りにしか見えません。

夜ともなると、何が何だか分からなくて困惑するほど大量の星が光っており、天の川までうっすら見えてたりして…。
天の川をプラネタリウム以外で見たことは一度しかないので、多分あれが天の川なんだろうと思いつつ、いや実は雲じゃないのかなと疑心暗鬼になったり。スマホで冬の夜空を検索して、あの星とあの星のそばを流れてる筈なんだけど、なんかちょっとずれてるような、そうでもないような、とあれこれ悩んだり。

運悪く初日が満月(しかもスーパームーン)でしたので、星空を堪能できる時間は短かったのですが(曇っている夜も多かったですし)、僅かの時間ながらも気の済むまで眺める事が出来ました。
(そもそも寒いのでそんなに長く戸外に立っていられない。上を見過ぎて首も痛いし。)

で、本題の乗馬体験の話に入ります。
全くの未経験者は馬に綱を付けて引いてもらうだけ、というところもあるようですが、ここはいきなり牧場内を歩きます。もちろんスタッフが乗る先導馬の後を付いていくんですが。

広大な牧場内を歩き回るコースが、20分コースから75分コースまで色々あり、未経験者でも40分コース大丈夫ですよ、とのことだったので、いきなり40分コースから始めました。

事前に気になっていたのは二つ。

1)どうやって馬に乗るのか
馬に乗るやり方は、まず左足を思いっきり上げて鐙にかけ、手を鞍にかけて上体をグイっと持ち上げるんだろうと思いますが、左足を思いっきり上げても鐙に爪先が届く気がしませんし、上体をグイっと持ち上げるのも、とても出来るとは思えません。

2)馬から落っこちないか
なんといってもグラグラ揺れるので、落っこちないか心配です。
運動測定で、目を閉じて片足立ちして何秒立っていられるかというのがあるじゃないですか。あれ、5秒と立ってられないんですよね。ああいうの苦手なんです。揺れる電車内でどこにも掴まらずに立つのも苦手。すぐこけます。バランス感覚が悪いんでしょうね。
そういう人が果たして馬に乗って大丈夫なのか。

しかし案ずることなかれ、1)に関しては駅のプラットホームのようなものがあり、これがちょうど馬の背中と同じ高さなのです。
ホームで待っていると馬が横付けされるので、そのまままたいで腰を下ろせば着席完了。うまいことできてます。

2)に関しては、鞍にデカイ突起がついており、これをがっちり握っている限り落ちる心配はありません。それに思ったほど揺れないので、不安になったり気分が悪くなることもありませんでした。

困るのは馬がしょっちゅう草を食べようとして立ち止まることなのです。
なんでも馬は満腹中枢が無いらしく、放っておくといつまでも食べ続けてしまい、進んでくれません。
最初そんなこととは知らず、ちょっと一口二口食べたら気が済んで歩いてくれるのかと待ってたのですが、そういうことをしていると馬は「この人の指示は無視していいんだ」と思ってしまい、ますます手がつけられなくなるんだそうなのです。
だから、少しでも草を食べようとする気配を見せたらすかさず手綱を引っ張り、駄目だよと教えてあげなければならないと。

そうするとですね、いつ馬が草を食べようとするのか分からないので、ずーっと見張ってなければならないわけで。
最初のうちは景色を楽しむどころではなく、馬の後頭部ばかり見てました。

それに、草の方をチラチラと見始めたくらいの時点ですかさず引っ張ればすぐに諦めてくれるし、軽く引っ張れば充分なんですが、一旦草を食べ始めたら幾ら頑張って手綱を引っ張ってもなかなか止めてくれないんですよね。
馬の力は強いので、引っ張り合いになったら人間は勝てません。
でも一旦引っ張ったら、馬が言うことを聞くまで引っ張り続けないと、馬はますます「この人の指示は無視していいんだ」と思ってしまい手が付けられなくなるので、人間は馬が諦めるまでとことん頑張るしかないんですよ。
気が弱くてすぐ諦めてしまう性分の人には酷な課題です。

スタッフの説明によれば、騎乗してすぐが肝心で、初めから絶対に食べさせないようにしていれば、馬の方が「あ、この人じゃ草食べられない」と理解して諦めてくれるそうなのですが、なかなかそれがうまくいかない。
最初のうちはすぐに馬に主導権を奪われてしまい、何度もお食事タイムに付き合わされてしまっていたのです。

しかし何度も乗っているうちに段々コツを覚え、最後の回では殆ど立ち止まらせませんでした!
流石にゼロには出来ませんでしたが、やったね!
これが目的でここに来たのじゃないような気もするけど、とにかくめでたい!

最初のうちは馬の頭を見張るので精一杯でしたが、何度も乗るうちにそれも慣れて、段々景色を眺める余裕も生まれてきました。

基本的に牧場内を歩き回るだけなんですけど、牧場というのは平坦な運動場に草が生えているものだと思ってましたが、いやいやなかなかに起伏に富んでまして、そこを馬がグイグイ歩いていきます。
少しの段差なら勢いよく登ったりするので(というか勢いを付けないと登れないみたい)、馬っていうのは本当に馬力があるんだなあ、と妙な感心の仕方をしたり。

先にも書いたように、阿蘇は寒い。それでニット帽をかぶってました。これが一度何かのはずみで落ちてしまい、思わず「あ!落ちた!」と叫んじゃったんですね。
馬が驚くので大声を出してはいけないとは事前に教えられてましたが、咄嗟の事で声が出てしまったのでした。
当然馬は驚いて駆け出してしまい、焦ったのなんの。
鞍の突起を偶然しっかり握ってたから助かったものの、でなかったら落馬するところでした。
馬も幸い先導のスタッフさんがすぐ止めてくれましたし。
これがこの旅最大のワイルドな体験でした。
蛇足ですが、おかげで何故帽子が禁止になっていたのかが分かりました…。

寒いで思い出しましたが、牧場は吹きさらしなので寒いだろうとしっかり着込んでいたのに、毎回途中で暑くなり、帽子とかネックウォーマーとか脱げるものはどんどん脱ぎ、ボタンが外せるものはどんどん外してました。
絶え間なく揺れてるもんだから、ついつい鐙の上で踏ん張ってしまい、で暑くなる。
そして初日明けた朝、尻が軽い筋肉痛…。
確かに、乗馬は良い運動になるようです。が、旅行から帰って来て体重計に乗ったら、全く変化なしでした。あれ?

なんだかんだで乗馬は非常に楽しくてすっかりはまってしまい、午前午後の2回x三日間の都合6回乗りました。
まあ馬に乗るなんてことは滅多にないし、ここで乗り溜めをしておこうと思ったのもあります。

なんでこんなにはまったのか自分の事ながらよく分かりませんが、しいて言えば、生き物でありながら乗り物でもあるという不思議さ、こちらの意思を伝えられた時の達成感、そして馬自身の可愛いさ。そういったところにぐっと来たのではないかなーと思います。

というわけで楽しい阿蘇旅行でした。
いやいや、旅行って今まで関心がありませんでしたが、どうして楽しいもんですね。

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